今回の第114回歯科医師国家試験の分析が終わりました。完結な講評を掲載しておきます。参考にして下さい。詳細な分析は当予備校にありますから、お問合せ下さい。
全体的な難易度としては例年通り、もしくは難化傾向にあったと思われる。 内容としては高齢者歯科に関する問題や歯周外科に関連した問題が多く見られ、歯周外科では術式だけではなく、その術式の内容、治癒過程についても問われていた。また今年度はコロナに関連して消毒や院内感染予防に関する問題が多く認められた。他に今回はレーザーを利用した義歯修理の方法や、睡眠時無呼吸症の治療において、最初の選択ではなく、その次の選択を求める問題などがあり、これらは例年に出題がなく、解答が難しいものであった。また臨床問題ではクラウンブリッジに関連した問題が今までにない内容で、解答するのが難しかったと思われる。
必修問題に関して
必修問題に関してはフォーハンドテクニックについてなど診療システムについての内容が出題された。しかしこのようなあまり見受けられないような問題はごく一部で、難易度は例年通りであり合格点を取るのが特に難しいということはなかったと思われる。
A問題に関して
必修問題の難易度はおおむね例年通りで、ニュルンベルク綱領で謳われているものや、舌の分界溝に開口するものはどれかといったあまり聞きなれない内容が出題されているものの、選択肢を見れば解答するにあたって十分に絞ることが可能な問題であったと思う。他はおおよそ過去問で出題された内容の関連項目であり、過去問を解いていれば十分に解答可能な内容であった。
一般問題及び臨床問題であるが、難易度はおおよそ例年通りであったと思われる。高齢者歯科に関連した問題がしばしば見られ、嚥下調整食分類の図が出題されていた。これに関しては知らないと解答できない問題ではあるが、他の問題は考えればおおよそ解答を得られる問題であったと思われる。
一方で今年度は一般問題ないし臨床問題では変わった問題がしばしば認められたように思う。例えば睡眠時無呼吸症に関連した問題で、スリープスプリントを使用した前後の結果を示した表を見て、次に行うべき治療内容を答えさせる問題があった。しかしそのような臨床的判断を行うのは、臨床経験の浅い国試の受験生では難しいのではないかと思われる。
B問題に関して
必修問題の内容は過去問で問われたような内容あるいはその関連項目で、解答は難しくなかったと思われる。また今回は認知症の検査に用いられるMMSEに含まれる項目に関連した問題があり、主要な認知症やうつ病の検査の検査名だけでなく、その項目についても理解している必要があった。
一般問題及び臨床問題は例年と同じような難易度で、解答はそこまで難しくなかったのではないかと思われる。今回はICDASコードを歯の状態から答えさせる問題があり、衛生の範囲の種々の検査に関して、やはり検査名だけでなくその内容、項目をよく覚えている必要があったと思われる。B問題の中ではクラウンブリッジのポンティックに関連した問題の難易度が高かったように思われる。ポンティックの底面の形態でなく頬舌側面の形態の差による利点や、底面の断面図からその形態を答えさせるなど例年にない問題が認められた。またインプラントを利用した治療において、その上部構造の製作過程を並び替える問題は過去問にもなく、写真からだけでは何をやっているのかよくわからず難しいと思われた。
C問題に関して
必修問題の内容はおおよそ過去問で出題されているかその関連項目であり、解答するのにそれほど難しくなかったと思われるが、フェニックス膿瘍という単語やクラウンブリッジ製作にあたって耐火模型を使用するものというのは聞きなれない内容であり、これらの問題は解答が難しかったと思われる。
一般問題及び臨床問題ではおおよそ選択肢から解答は可能であったように思われるが、超音波診断法の一つで、物体の硬さの違いを色で表示するエラストグラフィーや顎関節脱臼に対する外科的治療の図の選択をするといった今までの国家試験で問われたことのない内容の問題は難しかったと思われる。
D問題に関して
必修問題の難易度は例年通りで解答するにあたって困難ではなかったと思われる。一般問題及び臨床問題では、多くの問題は例年通りの難易度で、写真や問題文などから正解を導くことは難しくなかったと思われる。しかしシェーグレン症候群と比較したIgG4関連疾患の唾液腺炎の特徴を選ぶ問題や、医薬品、医療機器などの品質、有効性及び安全性の確保などに関する法律におけるコンポジットレジンが含まれる医療機器の分類を答えさせる問題があった。これらの名称やおおよその内容、症状を答えさせる問題は今までにあったが、今回はより詳しい内容が問われており、名称だけでなくその内容も詳しく勉強しておく必要があるだろう。