第114回歯科医師国家試験の個人的にピックアップしておきたい問題をシリーズもので定期的に掲載しています。
本日紹介する問題は、C-11 です。
こちらは、問題として適切であるが、必修問題としては妥当でないため、正解した受験者については採点対象に含め、不正解の受験者については採点対象から除外された問題です。
歯周病の第一次予防はどれか。1つ選べ。
a 永久固定
b 歯周組織再生療法
c ルートプレーニング
d 不適合修復物の再治療
e オクルーザルスプリントの装着
まずは、歯周病の予防について整理していきましょうか。
ざっくりわけると
1次予防はまだ病気になっていない。
2次予防はスクリーニングしたら病気になっている。
3次予防は補綴したりリハビリしたり…って感じです。
そして、
1次予防は生活指導や教育が挙げられます。
中でも、歯周病に限って説明するのならば
・プロフェッショナルケア(PTC)
・不良充填物の再治療
・悪習癖の除去
・歯肉・歯槽骨形態の修正
・咬合調整
・フッ化物の応用などが挙げられます。
2次予防はもう病気になっているのが前提なので、
「エックス線でとったら歯槽骨溶けてたし歯周病だな」とか、「歯周基本治療」や「早期治療」といったように早期発見と治療がメインです。
あとはこれ以上酷くならないように
・歯周膿瘍の処置
・ルートプレーニング
・歯周外科処置
・抜歯
といったものが挙げられます。
3次予防に関しては、
・補綴治療
・必要であれば精神治療
といったものが挙げられます。
この知識をもとにもう一度問題を見てみましょう。
a 永久固定
→永久に固定する…ということはかぶせもので固定するわけなので、3次予防のイメージがありますよね?
b 歯周組織再生療法
→一度歯周病が進んで、それに対してこれ以上酷くならないよう再生療法をほどこすわけですから早期治療とみなして2次予防。
c ルートプレーニング
→SRPは歯周病の基本治療なので2次予防。
d 不適合修復物の再治療
→仮に、補綴物といったものを入れて治療を終えた時点で前回の治療の3次予防は済んでいるわけなので、1次予防に入るのかな…?!
(ただ、もし、たとえば下顎大臼歯の不適合修復物によって根分岐部病変が進んでいるのがデンタルで見えたりしたら、悩んでしまいますね。。)
e オクルーザルスプリントの装着
→スプリント。。
「ブラキシズムを持っている患者さんが仮に歯周病じゃないとしたら1次予防に入るかも」ですし、
「歯周病持ちで、ブラキシズムによって咬合性外傷をうけたらどんどんひどくなってしまうので、それを避けるとするのなら2次予防にも入ってしまうな…どうしよう。。。」
となるとdかeなんだけど、どうしましょうね??
ここで大事な考えを再度復習しましょう。
出題者が何を想定して問題を作っているのかです。
☆☆出題者の心理を読んで☆☆マークしていきましょう。
出題者の考えをくみとってみてください。
この問題、患者さんは歯周病””のみ””をわずらっていることを前提に問題作ってますよね?
単純に考えましょう。
そして、
歯周病って臨床実習を思い出してみてください。
BOP(+)だったり、ポケット4mm以上だったり、
動揺度があったり、炎症所見があったり…ですよね?
対して、オクルーザルスプリント。
どういう時に使いますか?
歯ぎしり持ちの患者さん用に使うイメージがありますよね??
上にも一言コメントでeの横に書いてみた通りの印象です。
誰もこの問題、歯ぎしり持ちで歯周病の人に対しての1次予防だなんて書いてないですよね???
このように、問題文を自分で勝手に勘違いして問題を解くことはキケンです。。気をつけましょう。
☆☆☆自分で自分の脳にバイアスをかけて問題を解いていませんか?
色ものメガネをかけずに目の前の事象を捉えてみてくださいね。
ですから、この問題、個人的にはdが正解だと思われるわけです。
ちなみに一言コメントで解説を加えさせて頂きます。
熱いポイントとして、口腔内装置について一言。
実は最近保険診療でいろいろ変わったのがこの項目です。
ここのへんは今回、詳しくは割愛しますが、、
口腔内装置の項目には、
・外科でよく見かける顎関節治療用のもの、
・☆☆歯ぎしりに対する装置
・止血シーネ
・手術に当たり製作したサージカルガイドプレート
・オブチュレーター
・気管内挿管時の歯の保護等のモノ
・保護床
・放射線治療(スペーサー)
といったものが入っています。
この中で歯ぎしり(ブラキシズム)について、
米国睡眠学会の臨床診断基準に
睡眠時の日常的or頻繁な歯ぎしりと
以下の2つのどちらかを満たすものをブラキシズムと定義しています。
1.睡眠時のgrindingに矛盾しない歯の異常な咬耗
2.睡眠時のgrindingに矛盾しない起床時の一時的な顎筋の痛みor疲労感or側頭部疼痛or開口障害
が挙げられ、
この定義に沿った歯ぎしりがある患者さんに対して、オクルーザルスプリントを作るのです。。
つまり、歯ぎしりも何も問題文に書いてないのに
☆☆勝手に深追いしてはいけないのです。
深く間違えて出題の意図を勘違いするのは危険です。
(((さらに補足))
臨床コラム:顎が痛いのっていつ?どんなとき???
歯科医師の現場においても、顎が痛いと訴えて
くる患者さんも少なくはないです。
仮に、右の顎関節が痛い患者さんを想定しましょう。
問診を取る中で、
・いつから痛みますか?
・どんなときに痛みますか?
(お口を開いたり閉じたりするときに痛みますか?)
・正面から見て左右の顎は腫れてないのか?
(感染によって顎が痛いのかの確認のためのフレーズ)
・開口量がたくさんある患者さんだったら、脱臼ばりにちょっと痛いほうの顎関節が、関節結節を飛び越えて過剰な運動をしていないのか?
・何か変なことを顎にしてはいませんか?
肘をついてしまったり、ぶつけてしまったり?
(外傷や習癖を疑うときのフレーズです。)
といったように、いろいろ問診を行っていると思います。
これと同じように前述の問題ですと、例えば問診の中、例えば。。。
☆朝起きた時に顎に違和感を感じますか?
疲れた感じがしませんか?
と聞いてみて口腔内を視診してみると咬耗が
全顎的にみえるとするならば、ブラキシズムを疑って、先ほどの診断名をくだして口腔内装置をつけれるかどうか考えてみます。。。
☆昼間に上の歯としたの歯、くっついたりして
いませんか?!というような質問してみるのであれば、
TCHを疑うので、患者さんには「安静空隙があるのが普通です」、とお伝えして、「歯がくっつかないよう意識してみてくださいね。。」
と指導してみるのです。
これと同じで恐らく、この問題は
歯周病(単体)で診断をくだした患者さんに対して
行う治療法なのかな、、、と考えて
不適合修復物をとりあえずとっちゃおう!ってなっているわけです。
でも、現実にはブラキシズムと歯周病両方持っている患者さんもいるわけですし、どっちから治療したりとか両方ともいっぺんに治療するのかな、、、(?)
マークシートと違って臨床ではいろいろ考えられるわけです。
ただ、今回は5択の問題なので複雑に考えないで解いてみてくださいね。。って
少しぼやいてみました。。。
問診ってむずかしいですね。。。
☆☆☆今日のポイント☆☆☆
1.出題者の心理を読んでマークしよう!
2.勝手に問題文を勘違いしない!!!
☆☆☆自分で自分の脳にバイアスをかけて問題を解いていませんか?
色ものメガネをかけずに目の前の事象を捉えてみてくださいね。
以上のポイントを参考に有意義な受験生活をお過ごしくださいね。
また、実際に問題を解きながら他にはどんな疾患が考えられるのか生徒と先生が話し合いながら一つの問題からたくさんのパフォーマンスを引き出し、歯科医師国家試験という連想ゲームを楽しみながら受験生活を送ることが出来るかと思います。