過酷な114回歯科医師国家試験から、はやくも数ヶ月経ち、心機一転の4月となりました。
ある大学において、特待生になっても114回で落ちてしまった人、
必修が足りなくて落ちてしまった人、
不合格圏からまぐれで合格してしまった人
といった方々に関するリアルな話を塾生からお聞きしました。
ここまで差ができてしまったのはどうしてでしょうか。
何が足りなかったのか考えていきましょう。
1.特待生になったものの、114回で落ちてしまったA君
A君は人柄もよく、実習もそつなくこなす、みんなから信頼される人でした。
勉強面でも、学校の授業をしっかり聞き、内職もせず、卒業試験の対策を中心に勉強を進めていました。
しかし、114回に落ちてしまいました。何が足りなかったのでしょう。
それは、しっかり解答に至るまでのプロセスを大事にする態度の欠如です。
ヘルマンの歯齢など確かに暗記しなくてはならない項目は存在しますが、そのまま覚えてはいけません。
国試問題集の解答をそのまま鵜呑みにするのではなく、まず、実際に臨床の流れに沿って問題集の画像一つ一つから与えられた情報を読み取り、自分で診断した上で治療方針を考えてから問題の解答をみる習慣をつけることです。
A君は先生の解答をそのまま鵜呑みにし、
自分の思考力で咀嚼する習慣がないために落ちてしまいました。
また、同じカテゴリーから類推していく力も足りなかったのでしょう。
基本問題や基本事項をそのまま覚えるだけでなく、いかに覚えたものを使って柔軟に発想できるかどうかが大事です。
同じモノは2度と出ません。しかし、似た問題は出ますので類推できる力を養っていきましょう。
また、A君は卒業試験の対策に比重を置きすぎたがために、国家試験が疎かになってしまった事も事実だと思います。
卒業試験と国家試験がズレてしまっている歯科大学が多いのも事実ですので、卒業試験がほぼなく、国家試験の対策だけを高学年でできるような歯科大学ができることを祈るばかりです。
114回の国家試験はその作り方の過程を大事にする問題が多いです。
まだ115回出題委員の発表はないですが、基本このグループで数年は作る可能性が高いので、115回もこの傾向を踏まえて対策していくべきでしょう。
2.必修が足りなくて落ちてしまったB君とスレスレ受かってしまった丸暗記信者のCちゃん
B君は卒業試験1回目で下から10番の順位をとり、友だちにそそのかされて国試問題集13冊を解くのを何回も何回も繰り返しました。
その結果、なんとか卒業し、国家試験にいどむことができ、領域別の点数も足りてはいたものの必修試験でおちてしまいました。
一方、Cちゃんも決していい順位ではないものの
卒業試験はいつも学年の真ん中。某国家試験の選択肢をまとめた参考書といつもにらめっこで
なんとか卒業し、国家試験に挑めました。
その結果、合格を勝ち取りました。
きいてみると、必修は足りており、領域は全分野スレスレだったみたいです。
この2人の明暗を分けたのは何だったのでしょうか。
それは、5択の中で3つ最もらしい解答となる選択肢が出た際に、”問題作成者”が正しいと思われるものを”優先順位をつけて考えれる思考力です。
114回歯科医師国家試験でも、必修でTORCH症候群が催奇形性の問題で問われました。
略語は以下の通りとなっております。
T…Toxoplasmosis(トキソプラズマ)
・O…Other agents(梅毒やB型肝炎、水痘など、その他病原体)
・R…Rubella(風疹)
・C…Cytomegalovirus(CMV:サイトメガロウイルス)
・H…Herpes simplex(単純ヘルペス)
問題は
a 水痘
b 手足口病
c 口腔カンジダ症
d ヘルパンギーナ
e トキソプラズマ症
であり、私大の疑義や事実もあってか、答えはaとeになったものの、出題者の心理的にはおそらく、トキソプラズマを正解枝として作られていたように思われます。
要は、「相手の思考を汲み取って解答を選んであげる力」です。
定期試験では、誤字脱字程度で、テスト中に訂正のアナウンスが入ることがありますが、問題を解く上で支障が無ければそのような訂正は無視して解き切るべきでしょう。
試験は作る先生方の好きな問題や研究テーマも汲み取られるので、それも色濃く反映されている可能性があります。
Cちゃんは、オールデンタルでもバスケで実力のある女の子でした。おそらく、スポーツを通じながらここでパスすべきか、シュートを決めるべきか優先順位をつける力を自然と養っていたように思えます。
また、B君とCちゃんの決定打に関して、
今回の国家試験のように難易度が高くなるにつれて、領域別の足切りが極端に下がる傾向にあります。
元々、B領域は問題数が少なく、C問題は多いのでその分足切りラインはB領域は高く、C領域は低い傾向にありますが、今回のように難しい試験でかつ、傾向が消去法で解ける国家試験から思考力で解く試験にシフトした場合、必然的に下がると思います。
ですから、絶対的な足切りが決まっている必修試験で選抜することとなり、”優先順位をつけて選び切る力”が問われるわけです。
また、あくまで仮定のお話ですが、2000人近く受からせる国家試験におきまして、必修問題が難しく、500人しか必修合格しなかったとします。
流石に歯科医師は人数が多いと揶揄される事もありますが、残り1500人の埋め合わせにどの問題を削除し、領域のボーダーを下げると合格者が2000人になるかも考慮されているはずなので心配ないです。
難しくなればなるほど、必修試験で決まると言っても過言ではないでしょう。
〇国家試験の過去問の解答にこだわりすぎず、
〇臨機応変に優先順位をつけて選ぶ能力、
〇同じカテゴリーから類推する能力、
〇解答にたどり着くための思考力を学び、
歯科医師になってそれを今度は患者さまのために活かしていって欲しいものです。