(part.6) 第114回歯科医師国家試験 削除問題 解説(A-5)

第114回歯科医師国家試験の個人的にピックアップしておきたい問題をシリーズもので定期的に掲載しています。

必修問題として、妥当ではなく、設問が不明瞭で、正解が得られないために削除となった問題です。

本日紹介する問題はA-5です。

こちらは、必修問題として妥当ではなく、正解者には加点、不正解者は削除となった問題の1つです。

コラーゲンの3本鎖らせん構造を安定させるのはどれか。1つ選べ。

a.リシン

b.アラニン

c.グリシン

d.プロリン

e.グルタミン

まず、コラーゲンとはなんぞや?

Gly-○-□の繰り返しのもので、

コラーゲンやエラスチン、プロテオグリカン、ラミニン、フィブロネクチンといった細胞外マトリックス(ECM)の1つのことです。

一般的に、コラーゲンは3本がらせんことように集まってできた

コラーゲン領域と、非コラーゲン領域の2つがあり、コラーゲン領域では、繰り返し部分のGly-があって3本がらせんのように集まって安定化すふのに重要です。

このらせんのことを英語で螺旋といい、このことから螺旋状であることがわかります。

おもえば、矯正のクアドヘリックスとかも、

クアド(4つ)、ヘリックス(螺旋)という点からもどんな装置か類推できますね。

歯科の単語はひたすら英語をそのままカタカナ表記したものが多いです。チェックバイトといい、、

困った知らないカタカナ単語をみたら分けて区切って日本語に直してみると類推できることがあるので一言アドバイスとしてここに書いておきます。

脱線してしまいましたが、

コラーゲンの合成の仕方について確認していきましょう。

①ポリソーム(=粗面小胞体、リボソーム)で

さきほどのGly-○-□という

プレプロα鎖というものができます。

②小胞体の中でN末端側で切られたのち、

コラーゲンの分子の中のプロリンとリシンが

水酸化をうけます。

水酸化(-OH)がついた状態をヒドロキシ〜と呼びます。

この時、水酸化反応には補因子(コファクター)としてビタミンC(アスコルビン酸)とFe^2+が必要になります。

③ガラクトシルトランスフェラーゼ、

グルコシルトランスフェラーゼを受けて糖がつきます。

④ここまでうけた1本のコラーゲンが3つ合わさって3本鎖ヘリックス構造をつくります。

⑤3本鎖の末端に余計なもの(プロペプチド)がついてるので、プロテアーゼで切ってやります。

(protein ase→タンパク 分解するものと類推できるのは何個か前の英語の類推記事を見てみてくださいね。)

⑥コラーゲンの中のリシンが

リシルオキシダーゼ(リシン、酸化の反応?)を

うけてアリシンとなり、

アリシンが架橋構造の足場となっていく。

ここまで踏まえた上で、もう一度選択肢を見てみましょう。

a.リシン

→途中で反応をうけるものだったな、、

b.アラニン

→今までの話に出てなかったな。

c.グリシン

→Gly-○-□-の構造を作る上で1番大事そうだ。。

d.プロリン

→リシンと同じく途中で反応をうけるものだったな、、

e.グルタミン

→今までの話に出てなかったな。

☆☆選択肢のなかの優先順位をつけてやる☆☆と、

グリシン>>リシン、プロリンだとわかります。

確かにリシンとプロリンも考えられますが、

☆☆この出題者が解答にしたいものを

選ぶ力が大事☆☆ですので、

グリシンが正解になるわけです。 

また、最後に余談ですが、もう一つ皆さんにお伝えしたい事として

基礎分野と臨床分野の知識の横断です。

コラーゲンといえば、心臓や骨、角膜、、いろんなところに使われている建物の柱みたいなものです。

その柱がダメになってしまえば、当然建物自体ダメになってしまいます。

個人的に、歯科国試でみかける疾患はコラーゲンがダメになって発症する病気が多いように思えます。

最後にそこを確認してこのpart.6を終えたいと思います。

例として、骨をあげましょう。

骨とか象牙質とかセメント質って硬いけど意外にも1型コラーゲンが多いんですよね。

コラーゲンで足場を作ってから石灰化してできる感じです。ざっくりいいますと。

その足場となるコラーゲンが例えばもし、Gly-○-□のGly同士が近づいて安定すればいいのにGlyの代わりに変なArgとか Gluとか変なのが入ってしまったりしたら安定しないし、分解を受けて壊れてしまいます。当然そうなると、できるはずの骨もぼろぼろなのであんまりよくないわけです。

このコラーゲンが1型だったら骨形成不全症。。となるわけです。

コラーゲンがだめなひとだったら「他にもコラーゲンでできてそうなとこだめだよな。。。」と気づけた人はいいカンをしています。

目であれば屈折率が変わってしまい、青くみえる。

ですから、青色に目が見えてしまう。

心臓などもだめそうなので選択肢に例えばもし、

大動脈弁や僧帽弁の異常などがあったら正解になり得そうだな、と考えられるわけです。

余談ですが、骨折しやすそうなこの病気であればビスフォスフォネート製剤を使っていないか?

とか、

歯科治療する上では、骨折しやすいから抑制具とかは避けたほうがいいな、、、とか、

象牙質とかも脆いし、歯もチッピングしやすそうだったら破折や咬耗を守る意味で即重でレジンのスプリントを作って咬合管理をするのも患者さんにとっては幸せなのかな……といったように考えられるといいですね。

☆☆☆基礎分野と臨床分野の知識の横断☆☆☆をしてみるのもかなり勉強になると思います。

生化学単発でおわる知識で暗記するのはものすごくつまらないですし、役に立たないかもしれません。

せっかくですので臨床と関連して基礎分野をもう一度復習してみてはどうでしょうか。

☆☆☆本日のまとめ☆☆☆

1.ただしそうな選択肢の中で最も出題者が大事だと考えているものはどれか?

それを選ぶこと。

2.カタカナや英語から類推すること。

3.基礎分野と臨床分野の知識の横断!!!

以上のポイントを参考に有意義な受験生活をお過ごしくださいね。

実際に問題を解きながら他にはどんな疾患が考えられるのか生徒と先生が話し合いながら一つの問題からたくさんのパフォーマンスを引き出し、歯科医師国家試験という連想ゲームを楽しみながら受験生活を送ることが出来るかと思います。