part12 第114回 歯科医師国家試験 必修 削除問題 D-2  解説  

第114回歯科医師国家試験の個人的にピックアップしておきたい問題をシリーズもので定期的に更新しています。

本日紹介する問題は D-2 です。

こちらは、問題として適切であるが、必修問題としては妥当でないため、正解した受験者については採点対象に含め、不正解の受験者については採点対象から除外された問題です。

114 D-2

母乳栄養で欠乏のリスクがあるものはどれか。

1つ選べ。

a ビタミンA

b ビタミンC

c ビタミンD

d ビタミンE

e ビタミンK

今回は栄養についてまとめていこうと思います。

まずはいつも通り知識の確認から入りましょう。

「栄養なんて歯医者に関係ないなー」などと思ってる受験生も多いかと思います。

ですが、出題される分には、仕方がないので、今回はそこのへんまとめておきましょう。

☆この栄養の分野は、公衆衛生、生化学、口腔内科、小児、高齢者、生理学とも関係しているので、十分自分なりに整理しておきましょう!!

(ちょっと長くなってしまいますが、あえて最初にこっちの考え方で切ってみます。)

まずは推定平均必要量、推奨量、目安量、耐用上限量、目標量について整理。 

・推定平均必要量→母集団の50%くらい。半分の人が栄養okな量のこと。

・推奨量→ほぼみんな栄養足りてて、不足状態の人がいないこと。

・目安量→一定の栄養を維持するのに十分なくらい。推奨量と推定平均必要量といったものが計算できない時につかいます。。

・耐用上限量→これ超えちゃうと逆にとりすぎ。といったもの。

☆目標量→生活習慣病の予防のために日本人が目標とすべき量。。

「なんのこっちゃわからん」と思われている人に、もっと整理すると

「小さい値(推、推、目安量)」

「大きい値(耐用上限量)」

それとあとは、「なにか目標を決められてしまっている目標量」と三つにわけると、なんとなくつかめると思います。

その中でもですね、今回のこの選択肢のビタミン君達は、

脂溶性のビタミンADEKとビタミンCにわかれるわけです。

とりあえずもう少し整理していきます。

①1歳以上の場合

とりあえず、ビタミンを取らないと体は壊れてしまいますよね。

ですから、基本的にビタミンは最低限接種して欲しい

小さい値(推、推、目安量)が決まっているわけです。

脂溶性ビタミンの中で唯一ちゃんと値が計算できたのが、ビタミンAなので

☆ビタミンAのみ、推定平均、推奨量が決まっている。

他のビタミンDEKは目安量とまずは覚えておきましょう。

続いて、大きい値ですが、ADEKの中で、

ADEは上の値(耐用上限量)が決まっているものの

ビタミンKは決まっていません。

☆☆単純に暗記が苦手な人は自分で意味付けして覚えたり、他の科目と繋いでエピソード的に覚えてもいいと思います。

今回であれば、ビタミンKは凝固(Gyou””k””oのKって無理くり覚えてもいいですし、、そこは置いておきますが)

凝固関係とわかっていれば、例えばですよ。

血液は人間の体重の1/13程度なので

70kgの人だ5.3リットルもあるわけで、

出血した時に止まらないと困るわけです。

ですから、耐用上限量を決めてしまうと

もし出血した時に困ってしまうから、ビタミンKは耐用上限量を決めないのかな、、?

といった風にですね。

☆☆自分で学問的に裏付けしながら覚えると、暗記量もガクンと減ったりしていいかもしれないですね! 

(1歳以上)

ビタミンA→推、推、耐用上限量

ビタミンC→推、推

ビタミンD→目安量、耐用上限量

ビタミンE→目安量、耐用上限量

ビタミンK→目安量

②☆乳児の食事摂取基準

乳児は大人と違って、最低量が計算できなさそうですよね?

ですから推、推の部分があくまで目安なので目安量にかわります。

あとはまだ1歳以上の我々と比べて

お肌がやわらかいイメージつけると、ビタミンEをいっぱいとってやわらかいのかな?

と自分でイメージをつけることで

ビタミンEの限度、上の値はいらないな。。

と考えると下図のようになります。

(乳児)

ビタミンA→目安量、耐用上限量

ビタミンC→目安量

ビタミンD→目安量、耐用上限量

ビタミンE→目安量、耐(×)

ビタミンK→目安量

このようにして暗記するとちょっとは楽しくなるかもしれないですね!

ここで、前回同様になるべく答えの個数になるように、選択肢をうまくグループでさばけるか何回かやってみましょう。。

どうですか?

一つに決まります?

耐用上限量が決まっているのは

ビタミンAとビタミンDの2つ。

目安量は全部共通しているので今回のグループ、組み合わせ、二項対立は失敗していると考えます。

それなら最初からこの上の知識と解説をするな!

といわれそうですが、今回はあえて失敗パターンを入れてみます。

なぜなら模試や国家試験の会場でどうですか?

選べない時ずっとその考えを持ち続けるがあまり思考停止に陥って、投げやりにマークシートにマルをつけるなんて人、心当たりがあるのではないでしょうか???

☆☆こういった時に必要になるのが、発想の転換です。。

いろんな科目と絡むのでしょうがないところにはなりますが、まず今のアプローチ。

どこがだめだったのか一緒に考えましょう。

(問題再掲)

母乳栄養で欠乏のリスクがあるものはどれか。

1つ選べ。

a ビタミンA

b ビタミンC

c ビタミンD

d ビタミンE

e ビタミンK

☆この時点でまずはどの科目から出題されているのかを考えます!

問題文の特別なワードを拾うと

「母乳」とありますよね。

ということは他のカルシウムでなく、あえて母乳ということなので、小児歯科からの出題と考えるのがベターです。

するとどうでしょう?

ビタミンADEK、Cで、足りないと小児で起きてしまいそうな病気を、連想ゲームしてみてください。

ビタミンA

→夜盲症

ビタミンD

→ビタミンD依存性くる病

ビタミンE

→あんまきかなくない???

ビタミンK

→さっきも凝固関係でまとめてたけど、

たしか、生まれたては腸内細菌が少ないから、血が止まりにくくて下血しやすいってきくな。

メレナとかいったな。。

ビタミンC

→歯茎から出血とか、かな。。

連想がある程度終わったところでどうですか?

二項対立してみましょう。

この場合、二項対立としてうまくきれそうな判断基準としてあえて、☆牛乳ではなく、母乳と表現しています。

つまり、

☆☆今のを小児でみかける疾患か?

☆☆大人でもみかける疾患か?

で二項対立的に切っていくとさらに切りやすくなるはずです。やってみましょう。

ビタミンA夜盲症→大人

ビタミンD依存性くる病→大人

ビタミンE→大人

☆☆ビタミンK、メレナ→小児☆☆

ビタミンC、歯茎から出血→大人

どうですか?

1つに決まりましたね。

ですから、ビタミンKが答えだと分かるわけです!

(((ここで補足)))

ビタミンDもほんとうは必要です。

以下、日本人の食事摂取基準2020よりちょっと大事そうなところだけピックアップしておきます。

・乳児(目安量)

乳児において、ビタミン D 欠乏によるくる病は稀ではないことが、海外でも我が国でも報告さ れ60─62)、日照機会の乏しいこと、母乳栄養などがその危険因子として挙げられている。

・ビタミン K は胎盤を通過しにくいこと 82)、母乳中のビタミン K 含量が低いこと 16,83)、乳児で は腸内細菌によるビタミン K 産生・供給量が低いと考えられること 82)から、新生児はビタミン K の欠乏に陥りやすい。出生後数日で起こる新生児メレナ(消化管出血)や、約1か月後に起こる特 発性乳児ビタミン K 欠乏症(頭蓋内出血)は、ビタミン K の不足によって起こることが知られて おり、臨床領域では出生後直ちにビタミン K の経口投与が行われる 84)。以上より、臨床領域にお けるビタミン K 経口投与が行われていることを前提として、目安量を設定した。

(日本人の食事摂取基準2020より)

どうでしょう。

ビタミンDは、

・日を浴びることが少ないこと。

・母乳栄養が危険因子

ビタミンKは、

・胎盤通過性が少ない点。(お乳飲む時点で生まれてるからこれは関係なさそうか?)

・母乳中のビタミンKがめっちゃ少ない。

・腸内細菌が少ないためにビタミンK不足で出血してしまうメレナ

・頭蓋内出血(泉門が開いていることもあり、安易にゆさぶっちゃいけないこともイメージするとつかみやすそう??)

とまとめてみます。

ここまでみると両方とも正しくみえますが、

☆問題を作った人の立場からみるに、

日を浴びるのが少なければ成人でもありえるし、

ビタミンD不足だったらわざわざ母乳というよりも

牛乳を飲まないことによって不足するリスクがあるのはどれか?

のような誰でも答えられそうな簡単な内容に変わってしまいそうですよね?

それに自分が小児の専門家であると思って問題を作る立場から考えてみてください。

どっちを正解にしたいかは、

当然ビタミン Kかな、、と思いますよね。

このように、

☆☆☆出題者が正解としたいものをマークでしっかり塗ること!!

これが第一に最も大事だということを最後に強調して終わりにします。。。

☆☆☆今日のポイント☆☆☆

1.まず、こういったいろんな分野にまたがる問題を解くにあたって、

この問題はどこの何の科目が出題しているかを考えること!

2.出題者が正解としたいものをマークでしっかり塗ること!!

3.現場でグループしてみて詰まったら、すぐまた別の組み合わせを選べるよう発想の転換を行うこと!!!!!

以上のポイントを参考に有意義な受験生活をお過ごしくださいね。

また、実際に問題を解きながら他にはどんな疾患が考えられるのか生徒と先生が話し合いながら一つの問題からたくさんのパフォーマンスを引き出し、歯科医師国家試験という連想ゲームを楽しみながら受験生活を送ることが出来るかと思います。